古代ギリシャの貴重なコインがオークションで古代コイン最高落札額記録を更新されました。
スイスのチューリッヒで2023年5月に開催された
Numismatica Ars Classicaのオークションにてオークション会社手数料込みで538万スイスフラン(2023年10月現在の為替レートで約8.8億円))で落札され、
オークションで売られた古代のコインとしての最高記録を更新しました。
オークション会社のエスティメイト価格(予想落札価格)の3.5倍の価格です。
このように高額で取引されるということは古代コイン市場が年々成長していることが伺えます。
出品元のオークション会社も「これは、古代コイン市場全体が繁栄しており、特に現在、古代のものに対する需要が非常に強いことを示しています。」とコメントを残しております。
落札されたコインは、かつてはロシアの国立美術館であるエルミタージュ美術館(State Hermitage Museum)のコレクションとして保存されておりましたが、
1934年にソ連政府の軍資金を作るために、ヨセフ・スターリンによって、
書籍、家具、古代のコインを収集するフランスの資産家、チャールズ・ギレット氏に
販売されました。
このコインがこんなにも高い値段で落札された理由はいくつか考えられます。
①当然、このコインのデザイン性、歴史的背景に加えて
・打刻の美しさ:打刻時の型も非常に美しく彫られており、力強く綺麗にコインのど真ん中にされており、当時のデザイン職人及び打刻職人の芸術性の高さと技術力の高さが伺えます
・地金の形/綺麗さ:打刻された地金も大きく、状態が良い
・保存状態:2400年前のコインにもかかわらず、こんなにも綺麗な状態で保存されております
NGCに鑑定に出されても超高鑑定コインになるでしょう。
②スターリングによって売られたこともこのコインに高値がついた理由でもあります。
コインは◯◯コレクションなど、かつて著名人のコレクションだったものは高値がつくことが多々あります。
そのため、スラブに◯◯コレクション(例をあげると:Salton Collection)などとついているものは通常よりも高値になる可能性があります。
(※このコレクションコインについてはまた後日別の記事で紹介させていただきます)
③また同種類の他のコインと決定的に異なり、一番の付加価値要素で、
同種類の他のコインとの決定的な違いは
表面の顔(サチュロスの顔)が通常は完全な左向きなのに対して、
こちらは斜め左を向いていることです。
この種類のコインは、現代のクリミア半島のケルチ近くの古代ギリシャの都市パンティカパイオン(Panticapaeum)で紀元前350-300年ころに打刻されたものです。
パンティカパイオンスターテル(Panticapaeum stater)として知られ、
表面には大きな目を持つサテュロス(ギリシャ神話の生き物)が、
裏面には槍をくわえたグリフォンが描かれています。
サテュロス(ギリシャ神話の生き物)の絵は、
紀元前432年から389年まで東クリミアのボスポロス王国を
統治したサチュロス一世(ボスポロスの王)をモデルにしたと考えられております。
参考までに、その後同じ種類のコイン(※こちらは表面のSatyrは完全な左向きのもの)の
グレードMS5-4のFine Style付きのものがアメリカのHeritage Auctionsにて2023年8月に
14万4千ドル(約2150万円)で落札されております。